法医学の基礎となる必読書4冊

no-img14

法医学の必読書を4冊紹介する.

法医学は「応用医学」である.したがって,まずは解剖や病理,臨床に関する基本的な教科書こそが必読書である.そのうえで,以下に紹介する書籍に目を通してほしい.

『法医学』(改訂3版)

本書は,「標準的な教科書」の一例である.

本書を読むにあたっては,まずは鳥瞰して眺める,目次をざっと頭に入れることも一つの方法である.

なお,分担執筆が大半の教科書では,どうしても読みやすさや内容にバラツキがある.教科書を選ぶ際は,よく比較検討することをお薦めする.

『死体の視かた(新訂)』

本書は,渡辺博司・埼玉医大名誉教授が検視官や法曹関係者向けに書いたユニークな法医学書である.

すべてが経験に裏打ちされた内容で,語り口にも特徴がある.

本書からは,a=b式の知識よりも,なぜそう考えるかという思考過程を読み取ることができる.

『死体検案ハンドブック(改訂3版)』

こちらはやや専門医向きかもしれないが,死体検案の技術をコンパクトに集約した書である.

死因究明二法の成立・死後画像診断の実践など,大きく変動している法医学の新しい情報にも対応する.

カラー画像や資料を数多く載せ,現実に行う実務ですぐ活躍する内容で、法医学プロフェッショナルのみならず,医師・医学生は手元に置いておくべき一冊である。

『中毒百科―事例・病態・治療(改訂第2版)』

日本では臨床(診断と治療)・基礎研究・分析技術・予防などを包括する「臨床中毒学」は発展途上の分野であり,本当の専門家が少ない.

本書は,内藤裕史・元茨城県立医療大学副学長の名者で通読は難しいが,手元においておくと便利な一冊だ.

興味のある部分のみでもいいが,ガス類の章は参考になるので,ぜひ読むべきである.

併読すべき法医学関連書籍

まず,神田橋譲治著『追補 精神科診断面接のコツ』(岩崎学術出版社)である.

法医学者は,死体とだけ付き合っているかのように誤解されるが,じつは人とのかかわりが非常に多い仕事である.「コツ」というと技術的な印象を受けるが,本書は広く人間関係を考えるうえも深い省察に満ちていると思う.

残りの2冊は,川喜多愛郎著『近代医学の史的基盤』(岩波書店)と梶田昭著『医学の歴史』(講談社学術文庫)である.

医学者でもあった木下空太郎は,「過去は決して過ぎ去ったものではなく,背中に廻った未来だ」と語っている.医学や歴史に興味がある人には,この2冊を紹介したい.参考文献などにあたることも楽しいであろう.

ジャンルを問わず,東西の古典を読むべきである.新刊書にもよい書籍はたくさんあろうが,若い時代に歴史の試練に耐えた古典を読むことは,必ず人生の宝物になる.

何を読むかは,それぞれの興味や方向性によるので一概にいえないが,まずは本との出会いが大切である.それが,医学の道でも必ず役立つはずである.

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする